相続した不動産を売る前にやること|段取りと相談先の選び方
※本記事にはアフィリエイト広告によるリンクを含みます。ただし私は、リンクを踏ませるためではなく、あなたが最初の一歩を間違えないために書いています。
親が亡くなり、実家や土地を相続することになった。いずれ売るつもりだけれど、何から手をつければいいのか分からない。 そうやって手が止まっている方に向けて書いています。
こんなことで迷っていませんか
- 相続した実家、いずれ売りたい。でも何から手をつければいい?
- 相談先は税理士? 司法書士? それとも不動産会社?
- 名義が親のままだけれど、このまま売れるの?
先に結論をお伝えします
相続した不動産は、いきなり売却の相談から入ると空回りします。順番は、①期限のある手続きの全体像をつかむ → ②誰に何を頼むかを整理する → ③名義と権利の「形」を整える → ④そこで初めて売却活動です。とくに③を飛ばすと、売りたくても売れません。
▼ この記事で分かること
- 同時並行で走る相続手続きの期限(7日・3ヶ月・4ヶ月・10ヶ月・3年)
- 税理士・司法書士・弁護士・不動産会社の守備範囲の分け方
- 売る前につまずく「権利の形」の実例と、事前に揃えておく書類
▼ 先に、正直な注意点
- 私は税理士でも司法書士でも弁護士でもありません。個別の法的・税務判断はしません
- 買取は、仲介で売るより価格が下がるのが一般的です。「とりあえず買取」ではありません
こんにちは。株式会社住宅ブランドコンサルティング代表取締役の堀之内健二です。私は約20年、住宅・不動産会社のWebマーケティングに携わってきました。その中で、相続税の相談サイト(税理士・司法書士の先生方が相談を受ける窓口)の運営や、不動産売却系サイトの運営にも関わってきました。
先にはっきりさせておきます。私は税理士でも司法書士でも弁護士でもありません。 ですから、この記事で個別の法的判断や税務判断はしません。そこは必ず有資格の専門家に確認してください。
そのうえで、私にしか書けないことがあります。相談の「入り口」を運営してきた立場から見た、みなさんが最初につまずくポイントと、その先の段取りです。士業の先生方は「相談してください」から先を書いてくれますが、その手前でつまずいている人がとても多い。そこを埋めるのがこの記事です。
目次
相続は「同時並行で期限が走る」。これが最初の壁

相続の相談サイトを運営していて、いちばん強く感じたのはこれです。相続手続きは、ひとつずつ順番に片付くものではありません。 複数の手続きが同時並行で走り、しかもそれぞれに期限があります。
突然のご逝去だと、なおさら大変です。銀行口座の凍結解除、各種名義の変更、保険、公共料金——事務処理が一気に降ってきます。実際、その事務処理をまとめて代行するサービスが成り立つほど、ご遺族の負担は重い。相談窓口には「何から手をつけたらいいのか」という声が本当に多く届いていました。
まず、主な期限を一覧で押さえてください。
| 期限の目安 | 手続き | 内容 |
|---|---|---|
| 7日以内 | 死亡届 | 市区町村へ提出 |
| 3ヶ月以内 | 相続放棄・限定承認 | 相続の開始があったことを知った時から。借金を引き継ぎたくない場合の判断期限 |
| 4ヶ月以内 | 準確定申告 | 故人の所得の確定申告。知った日の翌日から |
| 10ヶ月以内 | 相続税の申告・納付 | 知った日の翌日から。遅れると延滞税等が生じる場合がある |
| 3年以内 | 相続登記(名義変更) | 2024年4月1日から申請が義務化。正当な理由なく怠ると過料の対象 |
※2026年7月時点の一般的な枠組みです。起算日や適用は個別事情で変わります。必ず法務局・国税庁の案内、または専門家でご確認ください。
ここで大事なのは、「売る」話は、この表のどこにも出てこないということです。売却は、これらと並行して、あるいは後から動く話。にもかかわらず、多くの方が「早く売らなきゃ」と焦って不動産会社に電話をしてしまう。順番が逆なんですよね。
とくに注目してほしいのが、いちばん下の相続登記です。ここが、売却と直結します。
誰に何を頼むのか。相談先の交通整理

「相続の相談は誰にすればいいのか」——これが、相談サイトに来る方の多くがつまずいていた最初の壁でした。士業にはそれぞれ守備範囲があります。
| 専門家 | 主な守備範囲 | こんなときに |
|---|---|---|
| 税理士 | 相続税の申告、準確定申告 | 相続税がかかりそう/金融資産が多い |
| 司法書士 | 相続登記(不動産の名義変更) | 不動産があり、相続人間で争いがない |
| 弁護士 | 争いのある相続、遺産分割の代理交渉 | 相続人間で揉めている/揉めそう |
| 不動産会社 | 売却・査定、買取 | 名義を整えたあと、実際に売るとき |
ざっくり言えば、不動産があって揉めていないなら司法書士、相続税がかかりそうなら税理士、揉めているなら弁護士、という入り口の分け方になります。そして売却は、その後の話です。
「無料相談」の構造を、運営していた立場から正直に書きます
ここは、私が書ける数少ない領域なので正直にお伝えします。世の中には無料の相続相談窓口・相談サイトがたくさんあります。では、その運営費は誰が負担しているのか。
多くの場合、提携している士業事務所や事業者からの紹介料です。相談者が窓口を通じて依頼すると、その事務所から窓口へ紹介料が支払われる。私が関わっていたサイトも、構造としてはそうです。
これは悪いことではありません。相談者が無料で専門家にたどり着ける仕組みとして、十分に機能します。ただし、「無料だから完全に中立」とは限らないということは知っておいてください。紹介されるのは、基本的にその窓口と提携している先です。ここは外壁塗装の一括見積でも、注文住宅の相談カウンターでも、まったく同じ構造です。
だから使い方はこうです。窓口は「専門家にたどり着くための入り口の一つ」として使う。 そのうえで、紹介された先が自分の状況に合っているかは、自分の目でも確かめる。それだけで十分に価値があります。
売る前につまずくのは「権利の形」。実際にあった話

ここからが、この記事でいちばんお伝えしたい部分です。
以前、こういうご相談を受けたことがあります。お母様が所有していた不動産があり、そこは物置のようになっていて、長年いろいろな物が置かれていました。 その不動産を、50代の息子さんお二人が相続することになった。
ところが、いざ進めようとすると、不動産の権利が「相続するのに適した形」になっていなかったのです。そのままでは分けることも、手続きを進めることも難しい。結果として、「分筆」——土地を登記上分割して権利を整理する作業を行い、そのうえで専門家に依頼して相続手続きを進めていきました。
この話の教訓は、シンプルです。不動産は「あるから売れる」わけではない。売れる形に整っていて初めて売れる。
売却の前につまずきやすいポイントを挙げておきます。
- 名義が故人のまま:相続登記が済んでいない不動産は、そのままでは売却できません。売る前提なら、登記は早めに
- 権利の形が整っていない:一つの土地に複数の権利や利用実態が混在していると、分筆などの整理が必要になることがある
- 共有名義:相続人全員の同意がないと売却できない。人数が多いほど時間がかかる
- 境界が未確定:隣地との境界が確定していないと、測量・確定作業が必要になる場合がある
- 残置物がある:家財や荷物が残ったままだと、片付けや処分の手配が要る(今回の物置のケースがまさにこれです)
どれも「知っていれば先に手を打てた」ことばかりです。売却相談より先に、この整理から入る。 それが遠回りに見えて、いちばんの近道になります。
なお、分筆・測量・登記が必要かどうかは物件ごとに違います。判断は司法書士や土地家屋調査士などの専門家に確認してください。私は資格者ではないので、ここで断定はできません。
「普通には売れない不動産」は、受け皿が違う

権利を整えても、一般的な仲介では扱いにくい不動産があります。たとえば——
- 借地権付きの物件(土地は地主のもの。売却に地主の承諾や条件調整が絡む)
- 共有持分だけを持っている
- 再建築不可の土地
- 心理的瑕疵のある物件
- 遠方にあって管理できていない空き家
こうした不動産は、普通の不動産会社に相談しても「うちでは難しい」と断られることがあります。私が不動産売却系のサイトを見てきた中でも、ここで行き場を失う方は少なくありませんでした。
この場合の選択肢が、専門の買取・相談窓口です。借地権であれば借地権の専門相談窓口、訳あり物件の買取なら訳あり物件買取センターやワケガイのように、その領域に特化して買い取り・相談に応じるサービスがあります。一般仲介で断られた物件でも、専門業者なら扱えることがあります。
ただし、正直にお伝えしておきます。
買取は、仲介で売るより価格が下がるのが一般的です。 業者が自ら買い取ってリスクを引き受ける以上、当然そうなります。ですから、
- 時間がかかっても高く売りたい/一般的な物件 → まずは仲介を検討
- 早く確実に手放したい/一般仲介で断られた/管理が負担 → 買取・専門窓口が現実的
という使い分けになります。「とりあえず買取」ではありません。ここを取り違えると、売れたけれど後悔する、ということになりかねません。
相談する前に、これだけ揃えておく
最後に実務的な話を。相談窓口でも専門家でも、手ぶらで行くと話が進みません。 逆に、次のものが揃っていると一気に具体化します。相談サイトを運営していて、ここの差は本当に大きいと感じました。
- 登記事項証明書(登記簿謄本):名義と権利関係が分かる
- 固定資産税の納税通知書:物件の特定と評価額の目安に
- 公図・測量図:土地の形状と境界の状況
- 遺言書の有無:あるかないかで進め方が変わる
- 相続人の関係が分かるもの:誰が何人いるか
- 物件の現状:居住中か、空き家か、残置物があるか
これらを持って相談すれば、「で、どうすればいいですか」ではなく「この状況ならこの順番です」という具体的な話になります。
よくある質問(FAQ)
Q. 名義が親のままですが、売れますか?
A. 相続登記(名義変更)を済ませないと、原則として売却できません。2024年4月から相続登記は義務化され、取得を知ってから3年以内の申請が求められます。売る予定があるなら、早めに司法書士へ相談してください。
Q. 相続税がかかるかどうか、どこで分かりますか?
A. 基礎控除など個別の計算が必要なので、税理士に確認するのが確実です。申告・納付の期限は「知った日の翌日から10ヶ月以内」が目安です。金額の判断を素人がするのは避けたほうが安全です。
Q. 兄弟で共有のまま売れますか?
A. 共有名義の不動産は、原則として共有者全員の同意がないと売却できません。人数が多いほど調整に時間がかかるため、早い段階で方針を揃えておくことをおすすめします。持分だけを買い取る専門業者もあります。
Q. 無料相談窓口は、なぜ無料なのですか?
A. 多くは提携する士業事務所や事業者からの紹介料で運営されています。無料で専門家にたどり着ける有用な仕組みですが、紹介先はその窓口の提携先に限られます。入り口の一つとして使うのが賢い付き合い方です。
Q. 空き家のまま放置するとどうなりますか?
A. 管理の手間や固定資産税の負担が続きます。管理状態によっては行政の指導の対象になる場合もあります。売る・貸す・解体などの方針を早めに決めるほど、選択肢は多く残ります。
まとめ:焦って売却相談から入らない
相続した不動産で失敗しないコツは、順番を守ることに尽きます。
まず期限のある手続きの全体像をつかむ。次に、誰に何を頼むかを整理する(不動産があって揉めていないなら司法書士、相続税がかかりそうなら税理士)。そして名義と権利の「形」を整える。売却活動は、そのあとです。
権利が整っていない不動産は、売りたくても売れません。あの物置のケースのように、分筆という一手間が先に必要なこともある。逆に言えば、そこさえ整えば道は開けます。
そして、一般仲介では扱いにくい物件——借地権付き、共有持分、再建築不可、遠方の空き家——は、専門の相談・買取窓口という受け皿があります。価格が下がりやすいという性質も理解したうえで、「時間」と「確実性」のどちらを優先するかで選んでください。
繰り返しますが、私は資格者ではありません。判断は必ず専門家と一緒に。ただ、どの専門家に、どの順番で相談すればいいか——その交通整理だけでも知っておけば、最初の一歩は驚くほど軽くなります。
「時間」より「確実性」を優先したい方へ
※買取は仲介より価格が下がるのが一般的です。一般的な物件で時間に余裕があるなら、まずは仲介の検討をおすすめします。